盗撮で未成年の息子が逮捕されるとどうなる? 成人との違い・親としての対応は?

2018年11月02日
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盗撮で未成年の息子が逮捕されるとどうなる? 成人との違い・親としての対応は?

「盗撮」という行為は、成人・未成年を問わず犯罪であることに違いはありません。新潟県内ではもちろん、全国的に盗撮事件は起きていて、平成26年に迷惑防止条例違反の盗撮事犯として全国で検挙された件数は3265件だったという統計結果も発表されています。

かつて盗撮といえば、特殊なカメラなどを使用されていたイメージがありました。しかし、スマートフォンの普及により、盗撮事犯による押収物もスマートフォンが70.9%ともっとも高く、ある意味で身近な犯罪となっているかもしれません。

もし、あなたの子どもが盗撮で捕まったという連絡が来たら……。多くの方が、動揺し、困惑されることでしょう。盗撮は確かに犯罪ですが、成人が起こした盗撮事件とは異なり、未成年者が事件を起こした際は、しっかり反省して立ち直ってほしいという方針にもとづく対処が中心となります。特に、学生であれば、学校側の対処もひとつのポイントになるでしょう。

今回は、未成年の息子が盗撮行為で逮捕されたとき、親はどうすべきかなどについて、新潟オフィスの弁護士が解説します。

1、「少年事件」となる未成年の盗撮行為

盗撮は、「迷惑防止条例違反」、「軽犯罪法違反」などの罪に問われることになる犯罪です。罪を犯した者が成人であれば、「刑事事件」として裁かれ、これらの法律に定められた罰則を処されることになります。

しかし、盗撮を行った者が未成年であれば、刑事事件ではなく、未成年者が起こした「少年事件」に該当することになり、「少年法」が適用され、捜査が進められていくことになります。

  1. (1)少年法と刑法の違い

    刑法は、犯罪全般に対して科される刑罰について規定している法律です。対して「少年法」では、少年による犯罪や非行行為に対して、同じことを起こさないよう教育することが目的とされています。刑罰に処することを目的としている刑法などとは趣旨が異なる法律なのです。

    なお、一般的に「少年」というと、未成年の男子をイメージすることでしょう。しかし、少年法で示す「少年」は、未成年の男女を示しています。よって、少年法は、未成年の子ども全員が適用対象となります。

    少年事件が起きたときは、基本的な捜査が終了したのち、少年法のもと、保護観察や児童自立支援施設、少年院への送致など、「保護処分」が行われます。ただし、殺人など重大事件が起きた際は、該当事件が検察官へと送致されることがあります。その際は、刑法による刑罰が下されることとなります。

  2. (2)14歳未満の犯罪について

    法に触れる行為をした14歳未満の少年は、「触法少年」と呼ばれます。刑法第41条によって、「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と定められていて、刑法の適用対象外として扱われます。

    なお、14歳以上であれば「犯罪少年」と呼ばれ、法に触れる行為をする恐れがある少年を、年齢問わず「虞犯(ぐはん)少年」と呼ばれています。いずれも、児童福祉機関における教育などが規定されている「児童福祉法」の適用対象となります。

2、盗撮行為で逮捕された未成年者はどうなる?

未成年の息子が盗撮行為で逮捕されたといった事例を含め、少年事件に対しては基本的に刑罰ではなく反省の機会を与えるというかたちで、対応が行われます。しかし、逮捕から勾留へ至る捜査に伴うプロセスは、成人事件と変わりありません。

  1. (1)逮捕・勾留

    14歳以上の未成年の息子が盗撮すると、逮捕される可能性があります。逮捕されれば、最長で48時間、身柄が拘束され、警察の取り調べを受けることになります。

    その後、検察へ送致され、検察でも最長24時間まで身柄を拘束されての取り調べが行われます。しかしながら、必ずそれだけですべてが終わるというわけではありません。さらに身柄を拘束したまま捜査する「勾留」の必要があると判断されれば、検察から裁判所へ「勾留請求」が行われます。勾留が認められれば、まずは10日間、最長20日間までの勾留というかたちでさらに身柄を拘束されます。

    少年事件の場合は、「勾留に代わる監護措置」がとられる場合があります。「勾留に代わる監護措置」がとられると勾留とは異なり、少年鑑別所に拘束され、更新がなく身柄の拘束期間が10日に限られます。

  2. (2)家庭裁判所送致

    少年事件に関しては警察と検察による取り調べが済んだ後、家庭裁判所で扱われることになります。ただし検察官の取り調べは、必ず行われるものではありません。

    警察から、検察を介することなく家庭裁判所へ送致されるケースもあります。家庭裁判所では、調査官による調査が行われ、少年に対する処置として妥当であると考えられる内容について家庭裁判所へ意見を出します。その上で、「少年審判」においていかなる処分を下すのかを判断することになります。

    罪がない、あるいは十分に反省していて再度同じ過ちを犯す可能性が低いと判断されれば、少年審判は行われない場合があります。

  3. (3)少年審判

    家庭裁判所による判断のもと開かれる「少年審判」は、成人の刑事事件における刑事裁判に該当する制度です。しかし、罪を裁く場所ではなく、少年が更生するためにはどうすることが最適なのかを考え、判断される場所になります。

    少年審判では、裁判官から少年事件の当事者である少年や親、また調査官のほか付添人への質問などがあります。これらの質問への回答や、本人の状態を判断し、以下を代表とする最終的な処分が下されます。

    <保護処分>「児童自立支援施設等送致」、「少年院送致」など

    • 保護観察処分……原則として20歳になるまでか、保護観察処分の解除が行われるまで、少年が保護司による指導を受けながら更生を目指す。
    • 児童自立支援施設等送致……在所期間に関する明確な規定はなく、1年以上の誘致が行われるケースが多い
    • 少年院送致……原則1年程度、少年院で生活する

3、少年事件と一般刑事事件との違い

前述のとおり、未成年の息子が盗撮で逮捕されてしまったときは、捜査段階までは成人による犯罪と同じプロセスをたどることになります。ただし、処罰することを目的とした刑事事件ではなく、更生を目的としているため、捜査が終わった後の流れが異なることになります。

それ以外にも、大きな違いがあります。あらかじめ、少年事件の特徴を知っておきましょう。

  1. (1)少年事件は、原則としてすべて家庭裁判所に送致される

    少年事件に関しては「全件送致主義」がとられています。よって、一切の事件について、事件を起こした嫌疑がある限り、警察や検察から、家庭裁判所へと送られるように定められています。もちろん、捜査段階で無罪であることが明白であれば家庭裁判所へ送られることはありません。

    なぜ、全件送致主義をとられているかというと、未成年の子どもが事件を起こす際は、たとえ軽微と思われる事件であっても、家庭や生活環境など、なんらかの問題を抱えていることが多々あるためです。よって、未成年の子ども本人にとってもっとも良い環境を探るため、専門家がそろう家庭裁判所によって調査や判断を行う必要がある……と考えられています。

  2. (2)少年鑑別所における身柄の釈放

    成人の刑事事件においては、起訴された後、逃亡や罪証隠滅の可能性がないと判断されると保釈請求が認められ身柄が釈放されることになります。

    少年事件においては、監護措置が執られると少年鑑別所に身柄を収容されることになります。監護措置に対しては「異議の申立て」を行うことができます。この異議の申立てが認められると、少年鑑別所から出ることができます。ただ、少年事件については少年の更生の観点から判断されるため、成人が起こした事件と同じように、被害者との示談が成立すれば身柄が釈放されやすいというわけではありません。少年事件は罪を犯した少年の更生を目指して行われているため、慎重な措置がとられているといえます。

  3. (3)少年事件は、原則として公開の裁判は開かれない

    前項で触れた「少年審判」は、少年のプライバシーへ配慮する意図から、非公開で進められ、最終的な処分が下されることになります。不当な扱いを受けないためにも、法の専門家である弁護士が付添人として同席することは非常に重要なポイントとなるでしょう。

    ただし、殺人などの重大事件を起こし、刑事事件に相当という判断のもと、検察へ逆送されるケースについては、公開された裁判で裁かれることになる可能性もあります。

4、少年事件で弁護士に相談するメリット

未成年の息子が盗撮行為をしたとしても、それからの対応次第によってその後は違った結果になってしまう可能性があります。

弁護士が少年事件の弁護を引き受けた場合、早期釈放へ向けて拘束期間を短くするために取り組むばかりではありません。取り調べの中で立場を悪くしてしまうことがないようサポートするとともに検察、裁判官らに対してもアクションを起こします。退学といった事態とならないよう学校に対する動きも見せますし、本人がことの重大性について正しく理解していないとなればその意識を変えるべく向き合うのです。

  1. (1)盗撮事件を早急に解決するため親ができること

    未成年の息子が逮捕されて取り調べを受けるとなると、あなた自身が子どもの将来のために、なんらかの手を打ちたいと思うことは、当然のことです。しかしそれ以上に、逮捕された本人の動揺も大きいでしょう。あるいは、何かをすでにあきらめてしまっている可能性もあります。

    親ができることとしては、まずは現状を冷静に確認し、弁護士に依頼することです。なぜならば、逮捕から勾留が決まるまでの間は、親でさえ接見が制限されます。まずは、できるだけ早く本人自身と会話して子どもの心に寄り添うこと、それから、状況に適した対応を行い、できるだけ早期に自由の身を取り戻せるような対応を行うことが重要です。

    しかし、逮捕段階では親は捜査を待つことしかできません。そこで、唯一接見が許される弁護士を依頼するのが、最初に行うべきことと考えられます。

  2. (2)身柄拘束中の接見と調査官との話し合い

    依頼された弁護士は、留置場に拘束された子どもの心情を聞いて寄り添ったり、家族からの言葉を伝えたり、家族から預かった着替えなどの差し入れを行うことができます。さらに、本人に対して、盗撮という罪に関し、正しく理解するためのサポートも行います。反省を促したり、捜査を受ける際に必要なことをアドバイスしたりすることもあるでしょう。親など、身近な大人に対しては反抗的な子どもでも、親身に対応する弁護士には心を開くケースは少なくありません。

    もちろん、ただ接見して心理的なサポートを行うだけではありません。たとえば、取り調べ中の段階から意見書を検察へ出すなどの弁護活動にも取り組みます。また家庭裁判所へ事件が送られた後、鑑別所へ入れられてしまう可能性を回避するため、裁判官との面談、意見書の提出などの対応を行います。

    さらには、家庭裁判所への送致後に行われる調査においても、弁護士は裁判官へ意見を述べることができます。本人は、調査官と行う面接でうまく自分の思うところを話すことができないケースも少なくありません。そこで弁護士が調査官と話し合い、本人の「代弁者」となるほか、コミュニケーションを通じて実感された本人の長所を伝えるといった役割も果たすのです。

  3. (3)学校・職場への対応

    未成年の息子が盗撮事件で逮捕され、取り調べが長引くと、前述のとおり最長で23日間にわたり身柄を拘束されることになります。学生の身分であれば、逮捕という事態そのものが、学校からの退学という処分にもつながりかねません。すでに仕事をしている場合も、同様の問題を抱えることになります。

    事件のしらせを受けた学校や職場の対応についてはそれぞれ違いがあり、更生に期待する場合もあれば厳しく退学処分や解雇処分とする例も実際にあります。そこで親としてはどこまで情報を伝えれば良いのかが悩みとなりますが、これも弁護士へ依頼しておくと安心です。

    必要に応じて弁護士が学校や職場を訪問し、事情を説明した上で重い処分とならないよう話し合います。警察から検察を経ず、直ちに家庭裁判所へ送致される可能性もありますから、息子が逮捕されたとなった場合には直ちに弁護士への依頼に動くなど迅速な取り組みが求められます。

  4. (4)被害者の対応・示談交渉

    盗撮事件の被害者は、精神的に大きなダメージを受けることになります。「その程度のこと」では決してないのです。しかし、未成年の少年が加害者であるケースでは、被害者の心情にまで意識が及びません。

    前述したとおり、示談をしても、直ちに釈放される要因にはなりません。しかし、示談交渉の工程では、盗撮で逮捕された息子自身が、謝罪を迫られたり、親や弁護士が奔走する姿を見たり、心情から面会を拒否される経験をすることになります。これらの経験を通じて、盗撮という罪の重さについて自覚し、その自覚が、同じ過ちを繰り返さないための「歯止め」になると考えられます。

    しかし、加害者本人である息子や、加害者の親が直接、被害者の連絡先を聞き出し、会って示談交渉しようとしても、警察は個人情報を明かしません。たとえ相手が知り合いであっても、拒否される可能性が高いものです。

    しかし、弁護士が被害者への対応にあたり、仲介によって示談が成立する事例は多くあります。

5、まとめ

盗撮行為など、未成年者が犯した罪については、罪に対して刑罰を与えるよりも本人を更生させる目的をもつ少年法にのっとり処分を受けることになります。身柄が拘束されている間は学校や職場にも行くことができませんし退学、解雇という可能性は否定できません。

逮捕されて身柄を拘束されたのであれば、できる限り早いタイミングでベリーベスト法律事務所 新潟オフィスへ相談してください。依頼された弁護士であれば、子ども本人にとってベストな方向で解決できるよう、弁護活動を行うことができます。事件そのものに関するサポートだけでなく、その後の日常生活を守るための助けにもなるのです。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています